【猫のFIPウェットタイプ】腹水排出の必要性と正しい知識
- CureFIP Japan
- 7月14日
- 読了時間: 5分
更新日:7月17日
最初はちょっとお腹がふっくらしているだけに見えたかもしれません。「太ったのかな?」あるいは「妊娠?」なんて冗談を言っていた方もいるでしょう。しかし、それはFIP(猫伝染性腹膜炎)のはじまりだったのかもしれません。
次第に食欲が落ち、眠ってばかりで、動きも鈍くなる。呼吸が荒くなり、目の輝きも失われていく——そんな変化に気づいたとき、多くの飼い主が病院で「ウェットタイプのFIP」と診断を受けます。
この記事では、FIPによる腹水とは何か、なぜ起こるのか、排液処置(パラセンテシス)の必要性、安全性、そして注意点について、専門的な内容をわかりやすく解説します。

ウェットFIPとは?
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、猫コロナウイルスの変異によって発症する重篤な感染症です。中でも**ウェットタイプ(滲出型)**は、腹部や胸部に体液がたまるのが特徴です。
この体液が臓器を圧迫し、呼吸困難や食欲低下などの症状を引き起こします。
かつては「不治の病」とされていましたが、近年は**GS-441524(ジーエス)**などの抗ウイルス薬の登場により、治療が可能になりつつあります。
とはいえ、治療初期には腹水への対処が重要です。
なぜ腹水がたまるのか?
ウェットFIPでは、腹膜や胸膜に炎症が起き、血管からタンパク質を含む体液が漏れ出します。この体液が腹腔や胸腔にたまることで、以下のような悪影響を及ぼします:
呼吸のしづらさ(横隔膜が圧迫されるため)
胃腸の圧迫による食欲不振
活動量の低下や元気消失
排液(パラセンテシス)とは?
パラセンテシスとは、腹腔(または胸腔)にたまった体液を、注射針などで排出する処置です。呼吸困難や強い圧迫感が見られる場合に、緊急対応として実施されることがあります。
ただし、これは根本治療ではなく、あくまで補助的な処置です。症状を一時的に緩和し、抗ウイルス薬の効果が現れるまでの時間を稼ぐ目的で行われます。
排液が必要となるケース
以下のような状況で、獣医師が排液を提案することがあります:
腹部の腫れがひどく、歩行や食事に支障がある
胸部に液体がたまり、呼吸が苦しそう
腹水や胸水のサンプルを検査してFIP診断を確定したい
初期治療や診断の補助として行うことが多く、繰り返しの排液は推奨されません。体内のタンパク質が失われ、栄養バランスが崩れるリスクがあるためです。
排液のメリットとデメリット
メリット
呼吸や腹部の圧迫感が軽減され、猫が楽になる
食欲や元気が一時的に回復する場合がある
診断のための検査材料が得られる
デメリット
根本治療をしなければ、再び液体がたまる
感染リスクや猫のストレスがある
タンパク質や栄養素が体外へ流出する
多くの経験者や獣医師は「本当に必要な場合だけ排液を行い、早急にGS-441524などの**根本治療を開始することが重要」と述べています。
処置の流れ
排液処置は通常、動物病院で以下のように行われます:
鎮静剤または保定具で猫のストレスを軽減
滅菌処置を行い、腹部または胸部に針を刺す
注射器または排液バッグでゆっくり液体を抜き取る
処置時間は10〜30分程度
処置後すぐに楽になるケースが多いですが、再び腹水がたまる可能性もあるため、経過観察が必要です。
排液後に注意すべきこと
処置後は以下のような変化が見られることがあります:
食欲の回復、元気になる(良い兆候)
排尿・飲水量の増加
数時間程度の疲労感
一時的な食欲低下(処置のストレスによる)
この間は24〜48時間、猫の様子をしっかり観察し、異常があればすぐに動物病院に相談してください。
最後に
FIPのウェットタイプと診断されたとき、飼い主としてできることは限られているように感じるかもしれません。しかし、排液処置を適切に行い、早期に抗ウイルス治療を開始すれば、希望はあります。
排液はあくまで「つなぎ」であり、本当の回復はGS-441524のような治療薬によってもたらされます。
今この時点でも、FIPから回復した猫たちは日本中にいます。彼らの飼い主も、あなたと同じように悩み、学び、決断を重ねてきました。
不安なときは、セカンドオピニオンの取得やFIP支援グループへの参加も選択肢です(例:[Facebookグループへのリンク])。
あなたの猫は、あなたの行動によって救われる可能性が十分にあるのです。
湿性FIP猫の体液排出に関するよくある質問
FIPによる腹水や胸水は必ず排出するべきですか?
必ずしもそうではありません。排液は呼吸困難や極度の不快感がある場合に限り、症状の緩和を目的として行われます。しかし、過剰な排液は体液バランスを崩し、猫の体力をさらに奪う危険があります。
排液を行わないとどんなリスクがありますか?
体腔内の液体が過剰に溜まると、肺や内臓が圧迫されて呼吸困難や食欲不振を引き起こす可能性があります。ただし、GS治療を始めることで自然に液体が吸収されるケースも多く、必ずしも排液が必要とは限りません。
排液を行うことで治療が早く進みますか?
いいえ。排液はあくまで一時的な対処療法であり、FIPそのものの治癒にはつながりません。FIPウイルスに対しては、GS-441524による抗ウイルス治療が必要です。
どのタイミングで排液を検討するべきですか?
猫が明らかに苦しんでいる、呼吸が浅く速い、横になると苦しそうにするなどの症状が見られた場合に限り、獣医師と相談のうえで排液を検討してください。
排液しないままGS治療を開始しても大丈夫ですか?
はい、大丈夫です。多くの症例ではGS治療を開始すると数日〜1週間以内に体内の液体が自然と吸収されていきます。排液を行わずに済むことで、猫の体力を温存しながら治療に集中できます。
排液後に再び液体が溜まってしまいますか?
GS治療を行っていない場合は再発する可能性があります。ウイルスの活動が続いている限り、体は炎症反応を続け液体を産生し続けるため、根本治療が不可欠です。
排液は自宅で行えますか?
絶対に行わないでください。無菌操作が必要であり、誤った処置は感染や出血、臓器損傷など重篤な合併症を引き起こすリスクがあります。排液が必要な場合は必ず動物病院で獣医師の管理下で行ってください。
FIP治療の第一歩は何ですか?
GS-441524を用いた早期治療です。発症後できるだけ早く正確な診断を行い、適切な用量と期間でGS治療を始めることで、多くの猫が回復へと向かっています。
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