猫の腹膜炎(FIP)とは?原因・症状・治療法を解説
- CureFIP Japan

- 7月31日
- 読了時間: 8分
猫の腹膜炎と呼ばれる病気の多くは、正式には猫伝染性腹膜炎(FIP)を指します。FIPは猫コロナウイルスが体内で変異して発症するウイルス性疾患で、かつては致死的とされてきましたが、現在はGS-441524という抗ウイルス薬を軸とした治療で高い寛解率が報告されています。標準的な治療は84日間(12週間)の投薬を、獣医師の管理のもとで行います。
この記事では、FIPの原因、4つの症状タイプ、そして治療の選択肢を、初めて調べる飼い主の方にもわかるように整理しました。専門用語はできるだけかみくだき、根拠のあるデータだけをお伝えします。
自宅でくつろぐ猫。
猫の腹膜炎(FIP)とは何ですか?
猫の腹膜炎(FIP)とは、猫コロナウイルス(FCoV)が猫の体内で変異し、免疫細胞であるマクロファージに感染して全身に炎症を起こすウイルス性の病気です。名前に「腹膜炎」とありますが、症状はお腹だけでなく、胸、目、脳など全身に及ぶことがあります。
FIPは若い猫、特に生後6か月から2歳前後での発症が多いとされています。多頭飼育やシェルター出身の猫では猫コロナウイルスの保有率が高く、発症リスクが相対的に上がると考えられています。
かつてFIPは「治らない病気」として知られていました。しかし現在は、GS-441524を用いた抗ウイルス治療によって、多くの猫が寛解に至っています。CureFIPのネットワークでは、2019年以降に100,000頭以上の猫が治療を受けてきました。
猫のFIPの原因は何ですか?
FIPの原因は、もともと多くの猫が持っている猫コロナウイルス(FCoV)が、一頭の猫の体内で病原性の高いタイプへ変異することです。腸内で比較的おとなしく存在していたウイルスが変異し、免疫細胞に感染して全身性の炎症を引き起こすと、FIPを発症します。
重要なのは、FIPそのものが猫から猫へ直接うつる病気ではないという点です。うつるのは変異前の猫コロナウイルスであり、その変異が起きて発症するかどうかは、その猫の免疫状態やストレスなど個体側の要因が大きく関わります。
次のような状況は、猫コロナウイルスの保有や発症リスクに関わるとされています。
多頭飼育やシェルターなど、猫の密度が高い環境
引っ越し、去勢避妊手術、環境変化などによるストレス
免疫がまだ十分に発達していない子猫
純血種の一部でみられる遺伝的な素因
FIPは初期症状が分かりにくいウイルス疾患のひとつです。見逃されやすい病気については、初期症状が分かりにくい3つの危険なウイルスでも解説しています。
伝染性腹膜炎(FIP)の猫の症状にはどんなものがありますか?
FIPの症状は大きく4つのタイプに分かれ、それぞれ現れ方が異なります。共通してみられるのは、繰り返す発熱、食欲不振、体重減少、元気の低下です。以下では4つのタイプを個別に説明します。
ウェット(滲出型)FIP
ウェット(滲出型)FIPは、お腹や胸に液体がたまるタイプで、進行が比較的速いのが特徴です。お腹がふくらむ、呼吸が苦しそう、といった変化で気づかれることが多くあります。
たまる液体は黄色くねばりのある性状が典型的で、腹囲の増加や呼吸数の増加が飼い主から見て取りやすいサインになります。
ドライ(非滲出型)FIP
ドライ(非滲出型)FIPは、体腔に液体がたまらず、臓器に肉芽腫と呼ばれる炎症のかたまりを作るタイプです。症状がゆっくり進むため、原因のはっきりしない発熱や体重減少として現れ、診断が難しいことがあります。
腎臓、肝臓、腸、リンパ節など、炎症が起きた場所によって症状が変わるのがこのタイプの特徴です。
オキュラー(眼型)FIP
オキュラー(眼型)FIPは、炎症が目に現れるタイプです。目の色が濁る、虹彩の色が変わる、瞳孔の左右差、目の中の出血などがサインになります。
見え方の変化や目の外観の異常に気づいたら、早めに獣医師の診察を受けることが大切です。
ニューロロジカル(神経型)FIP
ニューロロジカル(神経型)FIPは、炎症が脳や脊髄に及ぶタイプです。ふらつき、けいれん、行動の変化、後ろ足の弱りなど、神経に関わる症状が現れます。
神経型と眼型は、薬が脳や目に届く必要があるため、治療での投与量の設計が特に重要になります。
どのタイプかによって治療計画が変わるため、疑わしい症状に気づいたときの動き方は獣医師がFIPを疑ったときに取るべき行動も参考になります。
猫のFIPはどうやって診断しますか?
猫のFIPは、単一の検査だけで確定できる病気ではなく、症状、血液検査、画像検査、貯留液の検査などを組み合わせて総合的に判断します。診断は必ずあなたのかかりつけの獣医師が行います。
よく用いられる手がかりには、貧血、グロブリンの上昇、アルブミンとグロブリンの比(A/G比)の低下、黄疸などがあります。ウェットタイプでは、たまった液体を採取して調べることが診断の助けになります。
治療を始めた後の経過も、血液検査の数値で追っていきます。数値の意味についてはFIP治療中の血液検査結果を正しく読むで詳しく解説しています。
FIPの猫の治療法は何ですか?
FIPの治療の中心は、GS-441524という抗ウイルス薬です。GS-441524はウイルスの複製を阻害する働きを持ち、現代のFIP治療の要となっている成分です。標準的な治療期間は84日間(12週間)で、獣医師の管理のもとで進めます。
GS-441524の注射剤による単剤治療については、UC Davisのペダーセン博士らの研究(Pedersen, 2019)で92%の成功率が報告されています。エビデンスが示すのは、適切に治療を行えば多くの猫が寛解に至るということです。
近年は、GS-441524に加えてEIDD-1931を組み合わせる経口のデュアル抗ウイルス療法も選択肢になっています。この併用療法については、Li and Cheah 2025で78.3%の寛解率が報告されています。この2つの数値は対象となる薬剤や投与形態が異なるため、混同せず、それぞれの治療に対応する数値としてご理解ください。
併用療法の背景は2つの抗ウイルス薬による併用療法が注目される理由でも詳しく紹介しています。
注射剤による治療(GS-441524単剤)
GS-441524の注射剤は、1日1回の皮下注射を週7日、12週間(84日間)続ける治療です。投与量はFIPのタイプによって異なり、ウェット6 mg/kg、ドライ8 mg/kg、オキュラー10 mg/kg、ニューロロジカル10 mg/kgが目安とされています(Pedersen et al., UC Davis, PMC6435921)。
以下は、症状タイプと注射剤の1日あたり投与量の対応表です。
FIPのタイプ | 1日あたりの投与量 | スケジュール |
ウェット(滲出型) | 6 mg/kg | 1日1回 皮下注射、週7日、84日間 |
ドライ(非滲出型) | 8 mg/kg | 1日1回 皮下注射、週7日、84日間 |
オキュラー(眼型) | 10 mg/kg | 1日1回 皮下注射、週7日、84日間 |
ニューロロジカル(神経型) | 10 mg/kg | 1日1回 皮下注射、週7日、84日間 |
注射剤には複数の濃度と価格の製品があります。実際の選択と用量は、体重とFIPのタイプに基づいて必ずあなたの獣医師と決めてください。
製品名 | 濃度 | 価格 |
GS-441524 抗ウイルス剤, 20mg/ml濃度 | 20 mg/ml | ¥10,900 |
CureFIP™ GS-441524 + B12 注射剤 | 20 mg/ml + B12 | ¥11,900 |
CureFIP™ GS-441524 注射剤 30mg/ml 10ML | 30 mg/ml | ¥16,600 |
CureFIP™ GS-441524 注射剤 40mg/ml 10ML | 40 mg/ml | ¥18,900 |
経口カプセルによる治療(GS-441524 + EIDD-1931)
経口での治療を希望する場合は、CureFIP™ 経口カプセル|猫FIP治療 ダブル抗ウイルス配合(GS-441524 + EIDD-1931)(¥20,990)があります。1日1回、毎日1カプセルを、推奨12週間続ける設計です。
体重別の用量は、2.5 kg未満でGS-441524 25 mg + EIDD-1931 5 mg、2.5〜5 kgでGS-441524 35 mg + EIDD-1931 8 mg、5 kg超でGS-441524 50 mg + EIDD-1931 12 mgとされています。
この経口デュアル製剤はウェットおよびドライを想定した位置づけで、地域によっては眼型や神経型の兆候がある場合、または食事や排便ができない状態では推奨されないと注記されています。どのルートが適しているかは、飼い主のためのわかりやすい治療ガイドや獣医師との相談で判断してください。
GS-441524による治療はどれくらいの期間かかりますか?
GS-441524によるFIP治療の標準的な期間は84日間(12週間)で、投与終了後には経過観察期間を設けて再発がないかを確認するのが一般的です。治療は途中で自己判断で中断せず、獣医師の指示に沿って最後まで続けることが重要です。
治療中は、症状の改善だけでなく血液検査の数値も追いながら経過を見ます。治療の全体像を時系列で知りたい方はGS-441524によるFIP治療のタイムラインが参考になります。
FAQ よくある質問
猫の腹膜炎とFIPは同じものですか?
猫の腹膜炎として問題になる多くのケースは、猫伝染性腹膜炎(FIP)を指します。FIPは猫コロナウイルスが変異して起きるウイルス性疾患で、腹部だけでなく胸、目、脳など全身に症状が及ぶことがあります。
FIPは他の猫にうつりますか?
FIPそのものは猫から猫へ直接うつる病気ではありません。うつるのは変異前の猫コロナウイルスで、その猫の体内で変異が起きて初めてFIPを発症するため、発症には個体側の要因が大きく関わります。
GS-441524による治療の成功率はどのくらいですか?
GS-441524の注射剤による単剤治療では、UC Davisのペダーセン博士らの研究(Pedersen, 2019)で92%の成功率が報告されています。GS-441524とEIDD-1931を組み合わせた経口のデュアル抗ウイルス療法では、Li and Cheah 2025で78.3%の寛解率が報告されており、この2つの数値は治療内容が異なるため別々に理解する必要があります。
治療期間はどのくらいですか?
FIPの標準的な治療期間は84日間(12週間)で、投与後は経過観察を行うのが一般的です。途中で中断せず、あなたの獣医師の指示に従って最後まで続けることが大切です。
経口カプセルと注射のどちらを選べばよいですか?
FIPのタイプ、猫の状態、投薬のしやすさによって適した方法は変わります。特に眼型や神経型の兆候がある場合は選択に注意が必要なので、必ずあなたの獣医師と相談して決めてください。
FIPは正しく理解し、早めに動くことで向き合える病気になっています。治療の選択肢についてもっと知りたい方や、進め方に迷っている方は、CureFIPの治療オプションと相談窓口をご覧ください。最終的な診断と治療方針は、必ずあなたのかかりつけの獣医師とともに決めていきましょう。
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